?あの感動を再び！少しマイナーな名馬物語【アドマイヤベガ編】

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あの感動を再び！少しマイナーな名馬物語【アドマイヤベガ編】

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記録に残る名馬や人の記憶に残り続ける名馬など名馬と言っても人それぞれである。
この記事は、競馬を知らないが聞いたことがあったり、何となく知られている。

そんな大記録を残した名馬のお話ではなく、どちらかと言えばマイナー的な名馬

（馬主さんを始め関係者の方々、ファンの皆さんマイナーな名馬と呼んですいません）

を紹介します。
競馬ファンにとっては思い出話となり、今夜の酒の肴に。

競馬を知らない方にとっては、このような馬が存在したことを知り、少しでも興味を持って頂ければと思う次第です。
さて第一弾はアドマイヤベガのお話です。

【序章】双子で脚曲の仔

アドマイヤベガの母親は、一九九三年の桜花賞、オークスと牝馬クラシック二冠を制した名牝ベガ。
骨折により翌年引退したベガは、鳴り物入りで繁殖生活に入り繁殖初年度からサンデーサイレンスと交配。

周囲の期待が高まるばかりであった。
しかし、受胎したのは双子。

競馬では双子で生まれても、栄養を二分するなど虚弱体質になる可能性が高いため、まず二頭とも走れないと言われている。
現に日本で走った実例はない。

そのため、一つの胎仔を潰して（人工流産させること）一つを残す方法を取るのである。
可愛そうな話だが、経済動物と言われるサラブレッドの宿命なのか、馬として売れなければ価値がない。

今回のベガも例外ではなく、生産者は苦渋の決断をした。
そして生産者の賜物として残った一つの胎仔こそ、のちのアドマイヤベガである。

しかし双子という呪縛なのか、この世に生を受けて立ち上がった彼は、母親のベガ同様、左前脚が内側に曲がっていたのだった。

脚の曲がった仔馬はいくら良血でも買い手が付かない。
ここから彼と生産者たちの執念という戦いが始まる。

【第一章】試練の積み重ね

生産者たちの労苦を受けて、無事に競走馬となった彼は一九九八年の十一月に京都競馬場にてデビューを果たす。
ベガの初仔、良血、武豊が騎乗とデビュー前から何かと話題になった彼は、堂々の一番人気で出走する。

しかし、レースでは一着にて入線するも斜行（他馬の進路妨害）と制裁を受け四着に降着となった。
生まれて直ぐに脚曲という試練、デビュー戦でも降着という試練を受けた。

いくつもの話題を呼び、強い馬としても認められつつあるも彼の宿命だろうか、次から次へと試練がやってくる。
アドマイヤベガとは、そんな印象を与える馬だった。

しかもこの先試練が何度もやって来ることは、彼自身を含めこの時は誰も知る由もなかった。

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【第ニ章】試練という宿命

デビュー戦を斜行による降着扱いとなった彼は、次走を通常の未勝利戦ではなく果敢に五百万下のレースに挑んだ。
格上挑戦となったが、このレースでも堂々の一番人気に支持され辛勝、二戦目にして初勝利を飾る。

続く十二月に行われた二歳Ｇ３レース、ラジオたんぱ杯二歳ステークスに出走し、ここでも一番人気に応え見事勝利する。
これで同世代の頂点を競うことの出来るレールに乗ったと自他共に認められた。

年が明けて、三歳となった彼の四戦目は、牡馬クラシック第一弾、皐月賞を目指してのトライアルレース弥生賞。
このレースで今後のクラシック戦線を一頭のライバルとして争うこととなるナリタトップロードと初対戦となった。

その初対決、彼は一番人気に支持されるもナリタトップロードに土を付けられての二着。
皐月賞に向け、不安の残る一戦となった。

ところが、彼に対して競馬の神様は更に試練を与えた。
何と皐月賞直前に体調を崩してしまうのだった。

その影響で彼はレース当日、マイナス十二キロでの出走となるのである。
それでもファンは彼の勝利を信じ、夢見て一番人気に押し上げた。

だが結果は六着と惨敗。
しかも勝った馬は、後にＧ１を七勝し、獲得賞金一位（当時）となるテイエムオペラオーだった。

同世代にナリタトップロードとテイエムオペラオーという強敵が存在したことも彼にとっては、追い打ちとなる試練だったのかも知れない。

【第三章】試練を乗り越え頂点に

皐月賞は体調にも恵まれず惨敗となったが、世代の頂点に立つべく彼は、いよいよ日本ダービーに出走する。
今度は、体調も回復し皐月賞の時よりもプラス十キロでの出走が可能となった。

ファンの支持は、皐月賞を勝利したテイエムオペラオーが三番人気、皐月賞三着のナリタトップロードが一番人気。
彼は初めて一番人気ではなく二番人気での出走となった。

勿論、鞍上はデビュー戦から乗り続ける武豊だ。
因みに武は前年にスペシャルウィークで日本ダービーを初制覇しており、連覇の期待もかかった一戦となった。

レースは終始平均ペースで流れ、東京競馬場最後の長い直線に入ると先行する強敵ライバル二頭を見据え、彼は後方から襲いかかる作戦に出た。
残り二百メートルを切った時、テイエムオペラオーとナリタトップロードの二頭が完全に抜け出し、大外から彼が追走する形となった。

もはやレースの行方は、この三頭に絞られる。
そして、ついには、その二頭を捉え最後はナリタトップロードとの一騎打ちとなる。

ゴール前の実況は今でも忘れられない。

『ナリタトップロードか、アドマイヤベガか、ナリタトップロード、アドマイヤベガ、アドマイヤー！母のベガが二冠を達成して六年、その息子が輝く一等星に！』

最後までどちらが勝つか分からない熾烈な争いは、彼が半馬身リードしたところでゴール。
見事、幾多の試練を乗り越えて世代の頂点に立った瞬間だった。

なお、鞍上の武豊が史上初の日本ダービー連覇という偉業も彼に花を添えた。

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【第四章】王者として

世代の頂点に立ち順調に夏を過ごした彼は、クラシック最後の一冠となる菊花賞を目標に前哨戦であるＧ２京都新聞杯に駒を進めた。
ここでもライバル馬ナリタトップロードが彼の前に立ちはだかることになる。

ダービー馬でありながら、一番人気をライバルに譲る形で今回も二番人気。
しかしレースは僅差だったが再びの差し切りで勝利を収め、改めてダービー馬ここにあり！をファンに示した。

これで菊花賞に向けて万全の体勢が整った。
ところが菊花賞は三千メートルという長丁場、彼にとっては距離が長かったのか、脚の負担が大きかったのか、一番人気に推されるものの六着と惨敗。

勝ったのは、ライバル馬ナリタトップロードだった。
こうしてクラシックの栄冠を三強それぞれが分かち合う形で一九九九年牡馬クラシック戦線の幕が閉じた。

【最終章】早過ぎる第二の人生

菊花賞を終えた彼は、疲れを癒やすため休養に入り、次走を宝塚記念と目標を定めた。
しかし、またもや試練が訪れる。

左前脚の繋靭帯炎発症にて現役引退。
おそらく曲がっていた脚に負担がかかり過ぎていたのだろう。

結果的に昨年の菊花賞が生涯最後のレースとなった彼は、生涯戦績八戦四勝（主な勝鞍、日本ダービー）という成績を残し、惜しまれつつターフを去った。
その後種牡馬生活に入り、Ｇ１馬（桜花賞馬キストゥヘヴン）を輩出するなど偉大な父サンデーサイレンスの後継者として順風満帆な生活を送っていた。

しかし、彼には突如、最期となる試練が待ち受けていた。
種牡馬生活四年目を迎え種付も終えた、その年の秋から冬に入る時期だった。

偶発性胃破裂。
彼は、若干八歳という若さで突如この世を去った。

誕生前から試練を受け、最期まで試練と戦ったアドマイヤベガ。
彼は記録よりもファンの記憶に残る名馬として、これからも語り継がれるだろう。

なお彼の死から十六年が経った現在、彼の半弟であり中央、地方の芝ダート合わせてＧ１七勝を上げたアドマイヤドンが現役種牡馬として活躍し、ベガの血を残そうと頑張っている。

だがベガの血が残ったとしても肝心の彼の直系としての血は、今のところ目立った活躍馬も出ておらず、細々としか残されていない。
ただ、競馬は我々ファンの夢であり、浪漫である。

彼の血がこの世から絶えない限り、いつか必ず彼の血が受け継がれた競走馬が日本ダービーを走る。
その日が来ると信じて待ち続けたい。

ご購読ありがとうございました。

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