?あの感動を再び！少しマイナーな名馬物語【ナイスネイチャ編】

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あの感動を再び！少しマイナーな名馬物語【ナイスネイチャ編】

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早いものでマイナーな名馬物語も五回目を迎えました。
いつもご愛読ありがとうございます。

今回も記録に残る名馬や人の記憶に残り続ける名馬をご紹介します。
第五弾は、ナイスネイチャです。

彼の名前を聞けば、数々の異名を思い出す方も多いはず。

『馬券孝行馬』
『勝てないが掲示板を外さない善戦マン』
『ミスター複勝男』

など。
その中でも

『ブロンズコレクター』

は特に印象が強いと思います。
Ｇ１未勝利なのにＧ１勝利馬並みにファンから愛され、記憶に残り続ける。

今回は、そんなナイスネイチャがこれまで頑張った功績をお伝え出来ればと思います。
それでは、どうぞ！

【序章】

一九八八年、ナイスネイチャは北海道の渡辺牧場にて生を受けた。
父は、カナダのＧ１を二勝したノーザンダンサーの直仔であるナイスダンサー。

母は、チューリップ賞ほかＪＲＡで三勝を上げたウラカワミユキ。
ご存知の方も多いと思われるが、ノーザンダンサーは世界の競馬界に多大な影響を与えた世界的大種牡馬である。

彼は、その直系から遺伝子を受け継ぎ牧場長から

「これは良い馬だ」

と言われながら、幼少期を順調に育った。
この先、彼が違った形でファンに強烈なインパクトを与える馬になるとは、いったい誰が予想しただろうか。

【第一章】彼の最強時代

彼の入厩は少し遅い。
秋が深まり、間もなく冬に差し掛かろうとしていた頃だった。

とにかく気性が穏やかではなく、他馬を噛みつこうとしたり、厩務員を怪我させたりと栗東内では気性の荒い馬としてデビュー前から有名になった。
そんな彼も一九九〇年の十二月上旬、京都競馬場にてデビューを果たす。

デビュー戦は三番人気で出走し、ゴール前追い上げるも届かずの二着。
続く二週間後の未勝利戦にて彼自身、最初で最後の戦法となった逃げ切りにて勝利。

僅か二戦目にして初勝利を上げた。
年が明けて一月にニ走するも六着、三着と惨敗。

少し痛めた脚のケアを兼ねて短期放牧に出された。
帰厩後、不思議と彼は一変して穏やかになったと言う。

そこから彼自身の最強時代に突入することとなる。
復帰後、五百万下クラスのレースにて二着に敗れるものの、そこから条件戦を連勝。

重賞初挑戦となったＧ３小倉記念では古馬を一蹴。
三連勝を飾ると、菊花賞トライアルでもあるＧ２京都新聞杯も制して四連勝を達成。

一気に菊花賞の最有力候補として名乗りを上げた。
その菊花賞では二番人気にて出走。

しかし距離が長かったのか、勝ったレオダーバン（父マルゼンスキー）から〇・三秒遅れての四着に終わり、彼自身の連勝記録も止まってしまう。
ところが一ヶ月後のＧ２鳴尾記念にて一着を勝ち取り、暮れのＧ１有馬記念の参戦を決めた。

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【第二章】珍記録の始まり

ここまで十一戦六勝二着二回、重賞三勝。
輝かしい成績を引っ提げ堂々と有馬記念に二番人気で出走。

なお、一番人気は、当時の現役最強馬であり最強のステイヤーと呼ばれていたメジロマックイーン。
さて、この有馬記念は彼にとって、後に珍記録と呼ばれることになる歴史の幕開けであった。

レースは伏兵馬ダイユウサクが勝利し、大本命のメジロマックイーンは二着。
そして、彼は三着だった。

この三着こそが、来年・再来年と彼の運命を決定付けるものとなる。
翌年、四歳となった彼は約十ヶ月ほど休養に入り、脚を休めた。

復帰初戦となった十月初旬のＧ２毎日王冠では一番人気の支持を得るものの、三着に敗れる。
その後、Ｇ１天皇賞秋で四着、Ｇ１マイルチャンピオンシップでは三着と勝ち切れない日々が続いた。

そして、迎えた暮れの有馬記念では、二年連続の出場となり四番人気の支持を得る。
結果は、またしても三着だった。

【第三章】三年連続三着の勲章

有馬記念に二年連続出走も凄いことだが、二年連続三着もそれなりに実力がなければ、達成出来ない。
年が明け五歳となった彼は、重賞レースにて二着、三着、二着と好走するも勝ち切れない日々が続く。

そんな彼の走りを見て、ファンの間では、何時しか善戦マン、ブロンズコレクターと呼ばれるようになった。
その後、軽度の骨折を経て彼は秋のＧ２毎日王冠から始動した。

ここでも三着と馬券に貢献する走りを見せた。
しかし次走Ｇ１天皇賞秋では十五着、Ｇ１ジャパンカップでは七着と不甲斐ない結果に終わる。

善戦マンも五歳となり最早Ｇ１では通用しなくなったのではないかと揶揄された。
そして、三年連続出場の有馬記念。

十四頭中十番人気がそれを物語っていた。
レースは、この年の菊花賞を制したビワハヤヒデが断然の一番人気に支持されていた。

ところが、このレース最も印象付けたのは、約一年振りのレース出走で勝利したトウカイテイオーだった。
ゴール前、ビワハヤヒデとトウカイテイオーの争いとなり、十万人を越す観客を含めた日本中の競馬ファンがゴール前に釘付けとなったであろう。

それだけ熾烈な争いを演じ、一年振りのレースで勝利したトウカイテイオーのドラマティックな勝ち方には、皆が涙するほどだった。
そんな感動的なゴール前を彼は、しれっと三番手で通過した。

【第四章】久々の美酒

有馬記念三年連続三着との記録は、実力がなければ簡単に出来るものではない。
況してや、馬も馬齢とともに退化するであろう。

そんな中で三年連続三着を達成した彼は、紛れもなく名馬だとの声も高い。
しかし、しかしだ。

いくら二着、三着で馬券貢献とは言え、勝てないのでは勝利馬として記録に残らない。
勝てないと言う長い年月が続く中、彼が六歳となって迎えた夏のＧ２高松宮杯にて、やっと報われる日が訪れる。

『ゼッケン十二番ナイスネイチャ、ナイスネイチャだ！なかなか勝てなかったナイスネイチャが、この高松宮杯を制した模様です！』

実況アナが叫んだように、実に二年七ヶ月振りの勝利だった。

しかし、その後は重賞戦線に顔を出すも掲示板を外すようになり、馬齢と比例しての退化は明らかだった。
それでも彼はファンのために八歳になっても走り続けたのだった。

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【第五章】記録か引退か

そんな彼も八歳後半となり、そろそろ引退との二文字が見えていた。
しかし、彼には偉大な記録がかかっていたのだ。

前人未到の六年連続、有馬記念出走。
陣営は、是非とも彼には記録と記憶をファンに残すため、出走を決断する。

だが、一人だけ出走することに反対した人物がいた。
それは彼のデビュー戦から、ここまで支え続けた厩務員だった。

実は、その厩務員だけが彼に競馬で支障がない程度の軽度の骨折があることを重要視していた。
ところが、陣営は獣医から問題ないとされているのであれば、出走させると言い切ったのだ。

しかし、彼に万が一のことがあれば取り返しのつかないことになると唯一、厩務員だけが出走に反対した。
その厩務員の涙ながらの訴えに陣営は

「彼の一番の理解者が言うならば」

と引退を選択。
彼は、無事是名馬にて第二の人生を生まれ故郷である渡辺牧場に種牡馬として帰郷することとなった。

偶然かどうか分からないが、彼が最後に栗東を去る時、大雨が降り彼と厩務員は雨の中、大粒の涙を流したという。
そして、彼は生涯戦績四十一戦七勝（重賞四勝）の成績を残し、雨の降る栗東を後にした。

【最終章】あの人の分まで

一九九七年に種牡馬生活一年目として、二十頭前後に種付をした。
残念ながら、これといった仔には恵まれなかったが、それでも彼の元厩務員は第二のナイスネイチャを自身の手で再び世話をしたかっただろう。

しかし、一九九八年に悲劇が訪れる。
その厩務員が交通事故により四十一歳の若さで亡くなってしまうのだ。

世話どころか、彼の仔が走る姿を目にすることなく…。
厩務員のご家族も含め、どれだけ悔やんだことかを思うと心が痛い。

そんな彼は、その厩務員の死去を知ってか、現在三十三歳となっても元気に余生を過ごしている。
存命中のＪＲＡ重賞勝ち馬の牡馬最長寿記録も更新中である。

おそらく、彼は早世した厩務員の分もまだまだ生き続けると思っているに違いない。

そして、今も老体に鞭を打ちながら、元気に牧場内を動き回っている。
厩務員と過ごした日々の思い出を頭に浮かべながら…。

ご購読ありがとうございました。

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