?あの感動を再び！少しマイナーな名馬物語【マチカネフクキタル編】

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あの感動を再び！少しマイナーな名馬物語【マチカネフクキタル編】

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おかげさまでマイナーな名馬物語も第三回目を迎えました。
今回も記録に残る名馬や人の記憶に残り続ける名馬をご紹介します。

第三弾は、菊花賞馬マチカネフクキタルです。
栗東の某調教師が

「夏から菊花賞までの強さは圧倒的だった」

と二十世紀の最強馬に上げるほど、この馬が残した後方一気の末脚。

そのインパクトはとても凄かったです。
それでは、マチカネ軍団にフクがキタお話のスタートです。

【序章】マチカネ軍団

マチカネと聞けば、オーナーの細川氏がユニークな馬名を付けることで有名だった。
思い出される馬にイワシミズ

（ダビスタで無料の種牡馬として知っている方も多いはず）

やキンノホシ、ジンダイゴにタンホイザ。
人名をモチーフにしたモモタローやキンタロウも存在した。

更には、オオキニ、サンキュー、オイデヤスなど。
とにかく、ユニークな馬名が多く斬新的であった。

その冠名の由来だが、マチカネフクキタルのオーナーとなる細川氏は、自身が幼少期に過ごした家の裏にあった山が待兼山だったため、冠名をマチカネにしたという。
そんな中、マチカネフクキタルは一九九四年五月に誕生した。

馬名の由来は、新聞記者から一般公募してみては？との意見に細川氏が

「それも良いかも？」

と賛同。
約九千通もあった一般公募から彼ともう一頭（兄弟ではなく同期の馬）に対してワラウカド・フクキタルと命名。

『笑う門には福来たる』

を二頭で分けた命名は当時、話題を呼んだ。
彼の父はフランスの中距離Ｇ１を二勝したクリスタルグリッターズで母の父には、天馬と呼ばれたトウショウボーイの血が入っている。

幼少期は健康で特に目立った存在ではなく、血統からも中距離での活躍が見込まれた馬だった。
しかし四年後の長距離Ｇ１を制覇するのだから、競馬は血統だけではないと改めて実感せざるを得なかった。

【第一章】平凡な競走馬

その後、二歳となった彼は一九九六年十一月末に阪神競馬場のダート新馬戦に出走した。
しかしレースでは二番人気に支持されるも三着に敗れる。

因みにこのレース、大差で勝利したのは、後の桜花賞馬となるキョウエイマーチだった。
二戦目は、芝の新馬戦に出走するも五番人気で四着。

芝、ダートの適正が掴めないまま彼の二歳時は未勝利で終えることとなる。
三ヶ月の休養を経て、三歳となった彼は、三月中旬に再度ダートでの未勝利戦に出走。

不良馬場だったが一番人気に応え、三戦目にして初勝利を手にした。
しかし、同世代のライバル馬たちが、牡馬三冠レースの第一弾皐月賞を目指して戦っている中、彼は一歩も二歩も遅れる形での初勝利だった。

四月に入り、デビュー戦で大敗した相手のキョウエイマーチが桜花賞を取り、ブライアンズタイム産駒のサニーブライアンが逃げ切る形で皐月賞を勝利した頃、彼は芝の五百万下クラスのレースで二着、一着と何とかオープンクラスの仲間入りにした程度だった。

牡馬として生まれた以上、生涯に一度しかチャンスがない日本ダービーに出走させたい思いは、オーナーを始め調教師など全ての関係者が抱くだろう。
そんな中、何とかオープンクラスになった彼にもそのチャンスは僅かながら残っていた。

五月初旬に行われるプリンシバルステークスは二着馬までに日本ダービー優先出走権が与えられる。
彼の陣営は、そのレースに照準を合わせて、調教を行った。

迎えたプリンシバルステークスでは、六番人気だったが、後に最強の逃げ馬との呼び声が高いサイレンススズカに届かずも二着となり、見事日本ダービーの出走権利を得るのであった。

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【第二章】念願のダービー出走

プリンシバルステークスで二着となった彼は、何とか滑り込みでダービー出走を果たした。
彼を所有するオーナーの細川氏としても一九九二年のマチカネタンホイザが四着となった以来、二度目のダービー出走だった。

晴天で迎えた日本ダービー、注目の一番人気はメジロライアンの仔メジロブライト。
武豊騎乗のランニングゲイルが二番人気。

皐月賞馬のサニーブライアンは六番人気で彼自身は十一番人気だった。
結果は、皐月賞馬の維持とプライドが全面に出たサニーブライアンの逃げ切り勝ち。

彼はそのサニーブライアンから〇・五秒差の七着だった。

念願の日本ダービー出走は果たしたものの、惨敗に終わった彼は夏の休養を挟む前に福島にて、九百万下クラスのレースを走り、ここでは一番人気に応える形で勝利した。
その後、彼は英気を養うために休養に入った。

【第三章】福来たる！桁外れの脚

休養を経て、まだ残暑が厳しい九月中旬、彼はＧ２神戸新聞杯に駒を進めた。
このレースには、あのサイレンススズカも出走。

当然、一番人気はサイレンススズカとなり彼自身は、二番人気に支持された。
そんな彼にとって生涯一度の覚醒期間が、この時に始まる。

レースは、十馬身以上突き放してマイペースで逃げるサイレンススズカ。
誰もがサイレンススズカに追い付けないだろうと思った瞬間だった。

馬群の中から一頭だけが、桁外れの脚でサイレンススズカに迫った。
その一頭こそが、彼である。

彼に乗った南井騎手は

「まさかサイレンススズカを捉えることが出来るとは、凄い脚でしたね」

と彼を称えた。
十馬身以上あった差をゴール前で差し切る脚を魅せた彼は、見事に重賞初制覇を成し得た。

勢いのまま、彼は次走を菊花賞トライアルレースＧ２京都新聞杯を選んだ。
一番人気のプレッシャーを物ともせず、彼は桁外れの脚にて連勝。

ファンのみならず、あの脚では誰もが菊花賞を取るだろう。
そう思わせる一戦となった。

そして、迎えた菊花賞、蓋を開けて見ると、予想外にも三番人気。
なおＧ２京都大賞典で古馬を相手に勝利したシルクジャスティスが高評価されての一番人気。

二番人気は、メジロブライトだった。
しかし覚醒した彼には人気など関係なかった。

競馬界の名実況でお馴染みの杉本アナが放ったゴール前の声は、今でも忘れられない。

『マチカネフクキタルだ！またまた福が来た！神戸そして、京都に次いで、菊の舞台でも福が来た！』

豪腕、南井騎手を背に桁外れの脚を十万人の観衆前で披露し、見事、自身四連勝で菊の舞台も制してしまったのだ。
因みにこのレースには、後の大種牡馬となるステイゴールドも出走していたが、八着に敗れている。

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【第四章】燃え尽きた福男

菊花賞を勝利し世代のトップになった彼は、年が明けて五月に行われたＧ２金鯱賞から始動した。
しかし、二番人気ながら六着と惨敗。

続く六月のＧ２鳴尾記念でも四番人気の八着。
暮れのＧ１有馬記念では、五番人気で十三着と、あの桁外れの脚はどこにいったのかと疑われるほど、彼は勝ち切ることが出来なくなっていた。

その後、六歳まで走り重賞で二着が二度あったものの結局は十一連敗を喫する。
結果的に彼自身が勝利したのは菊花賞が最後となった。

桁外れの脚を魅せた菊花賞馬がこのようになるとは、誰が想像しただろうか。
これは彼に聞いた訳ではなく、聞くことも出来ないため想像の範疇だが、菊花賞を勝利して彼自身の中で闘争という炎が燃え尽きてしまったと思えて仕方ない。

最強の逃げ馬と称えられるサイレンススズカをも差し切った、あの豪脚を再び見ることが叶わないまま彼はターフに別れを告げた。
生涯戦績二十二戦六勝（主な勝鞍、菊花賞）

【最終章】僅かな血に福が来ると信じて

引退後、種牡馬入りした彼は、父クリスタルグリッターズの血を受け継ぐ馬として、稀少な存在となっていた。
しかし昨今のサンデーサイレンス系統の勢いに飲み込まれる形で種付数もそれほど多くなく、実際の種牡馬生活は三年程度。

残した彼の産駒は、ほとんどいない。
ただ完全に彼の血が途絶えた訳ではない。

我々ファンにとって、いつの日か彼の子孫がターフに福を連れて走る。
そう信じて、再び福が来るのを待ち続けたい。

ご購読ありがとうございました。

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