あの感動を再び！少しマイナーな名馬物語【ビワタケヒデ編】

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あの感動を再び！少しマイナーな名馬物語【ビワタケヒデ編】

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さて、すっかりお馴染み？となったマイナーな名馬物語も四回目となりました。
今回も記録に残る名馬や人の記憶に残り続ける名馬をご紹介します。

第四弾は、ビワタケヒデです。
ん？ビワハヤヒデの間違いじゃないの？と思った方も居るでしょう。

いや、ハヤヒデではなく、タケヒデでいいんです！（楽天カードマン風に）
実を言うとビワタケヒデは、ビワハヤヒデの半弟で三冠馬ナリタブライアンの全弟なのです。

そうです、今回は偉大な名馬である二頭の兄を持つマイナーな弟のお話です。
それでは早速スタートです！

【序章】偉大な兄の背を見て

一九九四年の日本競馬界は、二頭のある兄弟の年になったと言って良いだろう。
そう天皇賞春と宝塚記念を横綱相撲で勝利、これでＧ１三勝馬となった兄ビワハヤヒデと牡馬クラシック三冠を制しＧ１四勝を上げた弟ナリタブライアンの兄弟である。

この時点で兄弟Ｇ１勝利数は七である。
競馬ファンのみならず世間は年末の有馬記念で兄弟対決が見たいと騒いだ。

ところが、兄の方が天皇賞秋にて故障引退となってしまったため残念ながら、その夢は実現しなかった。
なお、その有馬記念は弟が敵なしと勝利してＧ１五勝目を上げている。

しかし、未だ競馬ファンにとっては、もし兄弟対決が実現していれば、どちらが勝ったのかと酒の肴になるほどの語り草である。
それほど、日本競馬界の歴史に名を残した二頭は名馬なのだ。

因みに二十世紀の名馬では、兄ビワハヤヒデが二十位で弟ナリタブライアンが一位に選ばれている。
そんな偉大過ぎる兄たちが活躍した翌年の

一九九五年四月、ナリタブライアンの全弟となる血統でビワタケヒデは誕生した。

【第一章】生まれた時からの重圧

当然だが彼は、生まれて直ぐに話題となった。
三冠馬の全弟、最強兄弟の弟など、彼自身の知らないところで周りが期待をかける。

そんなことも知らずに彼は、すくすくと成長するも兄たちと比べてデビューは、一九九七年の十一月と少し遅かった。
迎えた京都競馬場での芝コース新馬戦。

三番人気となったが鞍上は天才騎手、武豊だった。
ファンは、最強兄弟の弟はいったいどんな走りをするのかと大注目した。

しかし、その期待とは裏腹にレース途中で武豊を振り落としてしまい、落馬による競走中止となった。
とんでもないデビュー戦となった彼は一ヶ月後、再び武豊を鞍上に三番人気で出走。

今度は、完走するも結果は八着。
早く結果を出したい、いや出す使命があった陣営は、次走を二週間後とした。

鞍上が武豊から藤田伸二騎手に乗り替わり二番人気ながら、ようやくここで初勝利を上げる。
彼の宿命からすると遅すぎる初勝利であった。

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【第二章】常に比べられる宿命

周囲の期待に応えるため、陣営は是が非でもクラシックに出走させるとの思いは強かったであろう。
とにかく一ヶ月毎に五百万下クラスのレースに出走させ、四着、二着と惨敗。

このままでは皐月賞出走も叶わないため、三月のトライアルレース弥生賞に格上挑戦ながら参戦する。
しかし、兄たちと比べるのは人間の欲が生み出した勝手な話。

彼にそこまでの能力が無かったことは明らかだった。
六番人気で出走も結果は十二着。

余談だが、この弥生賞に勝った馬は三ヶ月後の日本ダービーを勝利するスペシャルウィークだった。
また、鞍上の武豊にダービー初勝利という勲章もプレゼントすることになる。

弥生賞を惨敗した後、陣営は偉大な名馬の弟を預かった使命を果さんと皐月賞最終トライアルとなるオープンクラスの若葉ステークスに出走させて、何とか夢を繋いだ。
だが、結果は八番人気ながら三着と奮闘するも敗北。

残念ながら、皐月賞優先出走権は得られなかった。
この時点で皐月賞はおろか、三冠馬の権利すら得られないまま、ファンの抱いた

『兄弟で三冠馬』

との夢は幻となった。

【第三章】意地の重賞制覇と故障

落胆したファンの信頼を取り戻すため、まずは二勝目を目指した彼は、日本ダービーが終わった頃、ようやく五百万下クラスのレースで二勝目を上げた。
せめて秋の菊花賞を制覇して三冠馬の弟としての汚名返上を晴らしたい。

その気持ちが焦ったのか、休養を入れず、今度は七月のＧ３ラジオたんぱ賞に出走した。
しかし、このレースこそ彼にとって唯一の重賞制覇となるのであった。

レースは四番人気で迎え、中団待機で最後の直線に勝負をかけた。
ところが、最後の直線で鞍上の藤田騎手は鞭を落としたという。

それでも追うだけで勝ってしまうところは、藤田騎手の上手い手捌きもあるが、潜在能力が高かったということなのであろう。
なお、二着は古馬になってＧ２を制し、種牡馬にもなったメイショウオウドウだった。

落胆したファンは、やっぱり偉大な兄の弟として彼は強いのだと再認識したのかも知れない。
しかし、陣営は、まだまだこんな物ではないと四ヶ月連続出走となる強行スケジュールを組んだ。

八月中旬、九州の小倉競馬場で行われた古馬Ｇ３小倉記念に彼を出走させたのだ。
このレース、ファンの期待は彼に集中する形で堂々の一番人気に支持される。

しかし、古馬の壁は厚く後方から追い上げて良い脚を見せるも三着が精一杯だった。
先のラジオたんぱ賞を制したことで賞金が加算されたため、菊花賞には出走可能となっている中での小倉記念出走は未だに理解し難い。

それでも彼は、使命を果さんと秋の大一番である菊花賞を目標に調教を始めた。
ところが、彼には脚部不安が待ち受けていた。

やはり無理が生じたのであろうと誰もが思えた。
そして、オーナー側は彼の一族の血を残すため、引退を発表する。

なぜ、早期引退に踏み切ったのか。
それは、この年の九月末に偉大な兄の一頭であるナリタブライアンが腸捻転のため、八歳という若さで早世したためだった。

これは、三冠馬ナリタブライアンの血が僅か二世代しか残せなかったことを考えた決断だったと言えよう。
ナリタブライアンとビワタケヒデ、実力は違えど全く同じ血である。

こうして彼は、十一戦三勝（主な勝鞍、Ｇ３ラジオたんぱ賞）と兄たちと比べれば、期待外れな生涯戦績を残しターフを去った。

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【最終章】背負う血の大きさ

現役引退を表明した翌年から、彼は種牡馬として第二の人生を歩き始めた。
しかし、現在に至るまでこれといった仔は誕生していない。

これは偉大な二頭の兄を見ても同じであり、産駒が全く走らないのだ。
現在、ナリタブライアンの子孫が僅かながら残っている程度でビワハヤヒデになると殆ど血を残せていない。

一方の彼に関しては、僅かながら地方競馬で子孫が走っている状態である。
もしかすると、この三頭いや、この血統は己の競馬にて、全ての力を使い切ってしまう。

それにより子孫まで強い血が伝わらず、結果的に良い仔が残せないのかも知れない。
唯一この血統での活躍馬と言えば、彼の半妹がＧ２京都大賞典を勝ったラストインパクトを出している程度である。

しかし、そのラストインパクトも種牡馬入りしていないため、この一族の血が残っているのは皆無に等しい。
逆に彼の母の半妹からは、Ｇ１三勝の牝馬ファレノプシスと日本ダービー馬を制し現在種牡馬として、活躍を見せるキズナが輩出されている。

彼からは、従兄弟に当たるキズナが一族の血を残そうと一頭で奮闘している。
さて、常に兄たちと比べ続けられた彼は、これといった活躍馬が輩出されないとの理由により、二〇〇五年を以て七年間の種牡馬生活を引退した。

その後、余生を過ごしている中、奇病により右目を失明してしまうアクシデントがあった。
それでも彼は、偉大な兄たちの弟として二〇二〇年二月に亡くなるまでの間、余生先の牧場に会いに来てくれるファンたちに愛想を振りまいていたという。

彼は、生まれた時から何かと重圧を背負い、競走馬として、兄たちの背中を追い越すことが出来なかった。
おそらく今でも、あの世で兄たちの背中を追い続けているに違いない。

ご購読ありがとうございました。

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